カキの養殖に使われるロープに付着したムラサキイガイ(京都府伊根町)=府海洋センター提供

カキの養殖に使われるロープに付着したムラサキイガイ(京都府伊根町)=府海洋センター提供

出荷に向けて籠に詰められたアサリの稚貝(宮津市溝尻)=府海洋センター提供

出荷に向けて籠に詰められたアサリの稚貝(宮津市溝尻)=府海洋センター提供

 魚介類の未利用資源を漁業者の新たな収入に結びつけようと、海の研究者たちも奮闘している。京都府海洋センター(京都府宮津市小田宿野)は、京の海で漁師たちから邪魔もの扱いされたり、眠っていたりした資源に着目し、漁業者を支援している。

■ムール貝やアサリ稚貝「新たな稼ぎ」に

 丹後の海で養殖されているカキが入った籠をつるすロープにこびりついた黒い物体。その正体は、パエリアやパスタに使われるムール貝の一種「ムラサキイガイ」。府内の海では消波ブロックやブイ、漁具など至る所にびっしりと付着している。カキ自体にも張り付き、カキの成長を妨げるため、漁師らにとって厄介ものだ。

 海洋センターは、食用として養殖している地域もあるムラサキイガイの活用策を見い出そうと、数年前から研究を開始。出荷に適した品質やサイズを把握するため、舞鶴湾で採取したムラサキイガイを調べた結果、殻と身の大きさが比例するという傾向があり、5月下旬から8月の夏場にかけて収穫した個体の身入りが良いことが分かった。

 ただ、ムール貝は殻付きのまま料理に使われることが多く、殻の掃除で出荷までに手間が掛かるという課題も浮上した。現在は商品価値を損なわない効率的な出荷方法を探っている。研究を担当している東海林明技師(31)は「良質なムラサキイガイを安定して出荷できるマニュアルづくりを進め、京都府産のムール貝は良いものだと認知してもらえるための研究と調査を続けたい」と話す。

 日本三景で知られる天橋立の内海・阿蘇海では、毎年大量発生するアサリの稚貝を府内外に販売する取り組みが進んでいる。

 5年ほど前、「阿蘇海に小さなアサリがたくさんいるが、夏ごろになるといなくなってしまう」という地元漁師の話を機に同センターが調べたところ、アサリが育つための植物プランクトンが豊富な阿蘇海には、推定で数千万個が生息していることが分かった。阿蘇海ではアサリの養殖が行われているが、養殖に使われる稚貝の数を上回る個体は手つかずのままだった。

 そこでセンターは、アサリが全国的に激減している現状から養殖用稚貝の需要に注目。地元漁師たちに協力し、約1センチの大きさに育った稚貝を2016年から兵庫県などに出荷している。昨年は西日本豪雨の影響もあり、出荷数は一昨年の約半分にあたる170万個にとどまったが、センターは引き続き稚貝の安定確保に向けた研究を進める。

 研究部の田中雅幸主任研究員(56)は「漁業者の生活は、これまでの漁だけでは成り立たなくなっている現状がある。今まで活用されていなかった資源をいかに工夫して稼ぎにつなげるかがわれわれの仕事のひとつ。定着には時間が掛かるが、海には収入に変わる素材がたくさんある」と強調する。

■元ホテルシェフ「試行錯誤が大事」

 海に眠る未利用資源の活用について元京都宝ケ池プリンスホテル(現・グランドプリンスホテル京都)総料理長の神田正幸・梅花女子大教授(70)聞いた。

 ―未利用資源を扱うメリットは。

 一番は原価がかからないこと。本来なら捨ててしまうものを生かしてアイデア次第で何でもできる。地元の海で取れた魚を使うことで、地域経済を元気にすることにもつながっている。

 -活用は進んでいるか。

 まだまだ進んでいない。要因の一つに宣伝の難しさがある。商品はできたとしてどう宣伝をするのかが重要。パッケージ一つとってもデザイナーなどプロの手を借りないと、手に取ってもらいづらい。海洋高の場合は、学生が未利用資源の活用に取り組んでいることが一つのPRになっているが、一般の人が挑戦するとなればなかなか難しい。着眼点の難しさもあり、すべてが資源として生かせるものばかりではない。プロでも活用に悩むものはたくさんある。日々、料理を作る中で「これはおいしい」というものが必ずある。突き詰めていけば商品になる。商品化しようと思うと、周りを巻き込んでいかなければならない。一番重要なのは料理への愛情。愛情があれば、ヒントも出てくる。いろいろな方法を試し、周りからアドバイスをもらいながら試行錯誤していくのが大事だ。

 ―今後、取り組みを発展させるには。

 パッケージデザインにこだわったり、地域の飲食店と協力したりするPRが重要だ。行政が支援し、商品をアピールするイベントを開くのも良い。地域が一体化して未利用資源の活用に取り組み、地元だけでなく京都府北部で増えつつある観光客に向けても発信していくことが地域活性化につながる。また、未利用資源に興味がある人へ情報を発信できるパイプ役も必要だ。