宇治市の移動支援事業の運用が変更されることになり、安堵する電動車いすユーザーの児玉さん(宇治市小倉町)

宇治市の移動支援事業の運用が変更されることになり、安堵する電動車いすユーザーの児玉さん(宇治市小倉町)

 移動が困難な障害者の外出を支援する自治体の「移動支援事業」で、京都府宇治市が電動車いすユーザーに対し、電源を切るよう求めてきた運用を変更し、10月から電源を入れたままでもサービスの対象にすることが分かった。当事者から「車いすを押すことだけが介助ではない。市の認識は実態とずれている」との抗議を受け、長年続いてきた異例の運用を見直すことになった。

■電源オフ「安全面も心配」

 移動支援は、障害者の自立をサポートする地域生活支援事業の一つ。2006年から市町村の実施事業となったが、利用条件や内容にはばらつきがある。宇治市によると、電動車いすは自分で移動できることから対象外とし、ユーザーには電源を切るよう求めてきたという。

 筋ジストロフィーを患う児玉貴志さん(36)=同市小倉町=は「進行性の病気で腕が上がらなくなり、コンビニでもジュースが取りづらいので手伝ってほしい。バッテリーを積んでいる電動車いすは大変重く、電源を切って押すとなると介助者の負担も大きいし、安全面でも心配だ」と話す。

 児玉さんは7月下旬、1人暮らしに向けて移動支援などを同市に申請した。普段から外出には電動車いすを使っているが、市の担当者から「電源を切る必要がある」と説明を受けた。

 申請に同行した日本自立生活センター(京都市南区、JCIL)の当事者スタッフ、油田優衣さん(22)=同市左京区=は宇治市の対応に驚きを隠さない。自身も電動車いすで移動支援を利用しているだけに、「京都市では当たり前なのに隣の市では使えないなんて。介助は押すだけではなく、姿勢の変更や服の脱ぎ着、水分補給など、障害によってさまざま必要になるのは当然」と訴える。

■改善要望も「再考するに至らず」

 JCILのスタッフは8月上旬、宇治市にあらためて改善を要望した。市は近隣自治体の運用状況も確認し、10月1日からの見直しを決めた。市障害福祉課は「これまでから同様の声があったのは承知しているが、数年に1度で、再考するに至らなかった」と釈明する。

 同課によると、市内の移動支援の利用者は約700人で、うち20~30人が電動車いすという。

 全国障害者介護保障協議会(東京)事務局の大野直之さんは「全国からさまざまな相談を受けるが、宇治市のような運用は聞いたことがない。行政の担当者はまず利用者の実態を知ることが大切だ。互いに言い合える関係づくりや、おかしな運用の改善にもつながる」と指摘する。