消費税率10%への引き上げが、あす10月1日から実施される。

 2度にわたり延期され、5年半ぶりの消費増税となる。

 消費税は、幅広い国民が負担し、景気に左右されにくい安定財源として1989年に3%で始まり、5%、8%へと段階的に引き上げられてきた。

 この30年で所得税、法人税とともに基幹税として存在感を増す一方、税率が上がるにつれて消費者の「痛税感」も強まっている。

 3度目となる税率引き上げに当たり、政府は初の軽減税率導入など多くの対策で影響を和らげようと躍起だ。

 だが、目前に迫っても、家計にのしかかる負担増や、複雑な制度と相まった小売り現場の混乱と疲弊、景気全体に重しをもたらすことを心配する声が渦巻いている。

 政府は7月の参院選の与党勝利で信任を得たとするが、共同通信の8月の世論調査で消費増税に反対はなお半数強に上っている。国民の不安や痛みに注意深く目を配り、できる限り取り除くよう手を尽くさねばならない。

 同時に、多大な労力、負担と対策費をかけて「2桁税率」に突入する消費増税は何のためか、改めて意味を問い直す必要があろう。

■低所得者ほど重荷に

 今回の2%幅の引き上げは、年間約5・7兆円の税収増に相当する。このうち、増税に合わせて始める軽減税率と幼児教育・保育無償化などの軽減分を差し引くと、新たに2兆円程度の国民負担増になるとみられている。

 軽減税率で外食などを除く飲食料品と定期購読の新聞が8%に据え置かれるが、身近な日用品が軒並み増税となる影響は大きい。第一生命経済研究所の試算では、1世帯当たりの平均負担増は10月から半年間で2万円、景気対策が終われば2022年度は4万7千円に上るという。

 低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」を伴い、幼保無償化に関係のない単身や年金生活の世帯はより厳しい。暮らしを切り詰めざるを得なくなる懸念がある。

 生活の基盤である光熱費や交通機関の運賃、おむつなどの必需品も標準税率10%に上がる。暮らしを支える実態と影響度を見極め、軽減税率の対象見直しや困窮者らへの支援などで逆進性の弊害を抑えることが求められよう。

 消費増税による景気の腰折れ防止のため、政府はキャッシュレス決済へのポイント還元、プレミアム商品券発行などの対策メニューに2・3兆円をつぎこむ。

 安倍晋三政権にとって14年の増税で消費の落ち込みが続いた苦い経験からだ。需要を先食いする駆け込み購入は前回に比べ一部にとどまっているが、多額を投じる効果が行き渡るか疑問点が多い。

 ポイント還元は、当初からの参加が約50万店と対象の4分の1にとどまる。店や決済業者で還元方法も異なり、コンビニ大手などは支払い時に実質値引きする。顧客の囲い込みとなり、消費を誘発する効果が偏りかねない。

 いずれの対策も期限切れ後に反動減を招く懸念がある。政府は追加対策も辞さない構えだが、公費で消費を支え続けるには無理がある。家計の手取り収入を増やす賃上げや、将来の生活不安をいかに取り除くかも大切だろう。

■価格転嫁には不安も

 小売り現場では、軽減税率が適用される線引きが複雑に入り組んでいる上、ポイント還元との組み合わせで5種類もの税率が存在するため戸惑いが大きい。分かりやすく制度の周知や情報提供を進めつつ、事業者の対応支援がとりわけ重要だ。

 中小店では、対応レジへの切り替えなど準備の遅れが目立つ。客離れやコスト負担、税処理の複雑さに不安を抱え、増税分の価格転嫁が難しいと訴える声が少なくない。

 大手業者らは本体価格の引き下げや割引きセールを打ち出し、製造、流通段階を含め価格競争が強まっている。価格転嫁できなれば人件費上昇などに悩む中小の経営をさらに圧迫する。買いたたきなど不正行為がないか行政当局は監視を徹底してもらいたい。

 消費税率10%への引き上げは元々、12年の旧民主、自民、公明の3党合意で、増大する社会保障費を安定的に確保し、将来につけを回さないために決められた。

■社会保障を賄えるか

 だが、安倍政権は教育無償化などに使い道を一部変更した。当初は国の借金返済などに増収分の8割を充てるとしていたが大幅に減り、財政再建はさらに遠のいた。

 安倍首相は参院選直前、10%を超える消費増税は当面不要と表明した。だが、景気対策への「大盤振る舞い」などにより、国の予算規模は100兆円を突破して過去最大を更新し続けている。無規律に歳出を膨らませては、超高齢化に伴う社会保障費の増大圧力を賄いきれなくなるのは明白だ。

 景気の足かせとなり、逆進性がつきまとう消費税にさらに頼ろうとするのか。安心して暮らせる社会保障の枠組みと、税制の全体を視野に入れた負担の在り方をどうするか、国民的な議論が求められよう。