昨年暮れには報道陣に練習を公開。今夏にあるはずだった東京パラを見据えていた一ノ瀬(2019年12月24日、大阪府東大阪市)

昨年暮れには報道陣に練習を公開。今夏にあるはずだった東京パラを見据えていた一ノ瀬(2019年12月24日、大阪府東大阪市)

ビデオ会議アプリでインタビューに応じる一ノ瀬。十分な練習が積めない今の状況は、自分自身を見つめる機会とも語った

ビデオ会議アプリでインタビューに応じる一ノ瀬。十分な練習が積めない今の状況は、自分自身を見つめる機会とも語った

 2021年夏へ延期が決まった東京パラリンピックの出場を目指す競泳女子の一ノ瀬メイ(近大職、紫野高―近大出)が練習拠点のオーストラリアから、ビデオ通話で京都新聞社の取材に応じた。新型コロナウイルスの影響で3月以降、代表選考レースは中止、練習場所も閉鎖された。現在も十分には泳げていないが、「目標は変わらない」と地道に練習を続けている。

 3月6~8日に静岡県で行われる予定だった代表選考レースで派遣標準記録突破を狙ったが、開幕1週間前に中止になった。さらに5月の代替大会も新型コロナの影響で取りやめに。オーストラリアでは今夏の東京オリ・パラは延期との予想がいち早く広がっていたという。
 「もし、東京大会が今夏あれば、自分や周りの人の健康や安全を第一に考えることは無理だった。延期が決まった時は、残念な気持ちもあったが、ほっとした。パラリンピックで表彰台に乗るという目標は変わらない」
 16年リオデジャネイロ大会に続く出場を狙い、昨年4月、近大からオーストラリア東部のサンシャインコーストに練習拠点を移した。パラ競泳専門のコーチがいるクラブチーム「USCスパルタンズ」で泳ぎ込んだ。3週間ごとに水中カメラで確認しながらフォーム改善に取り組み、クラブに6人いるパラ選手から刺激も受けた。しかし、今年3月下旬にはプールやジムが閉鎖された。日本に帰国すればオーストラリアへの再入国ができない可能性もあり、とどまることを選んだ。
 ここ1カ月半は週2回、近くの海で泳いで感覚を保ち、チューブを使って肩に負荷をかけたトレーニングを続けてきた。走ることで持久力を維持し、再開に備える。「今年の夏に向けて気持ちが張った状態で過ごしてきた。来年までに気持ちが切れたら意味がない」。あえて自分をリラックスさせることにも努めてきた。5月下旬にはようやくプールも再開した。
 練習に制限のある日々は「水泳を引いた自分」と向き合う機会にもなったという。SNS(会員制交流サイト)では自宅でのトレーニング風景のほか、短い右腕で靴ひもを結んだり、髪を結ったりする動画も公開。近年は障害のある子の親からSNSで相談を受ける機会が増えた。
 「私にとって当たり前のことでも、『楽しそうに生活しているのを見て安心した』と言ってくれる。人のためになる発信をしていきたい」。アスリートとして、人として、成長は止めていない。