大雨時に浸水の可能性がある地域を示した滋賀県の「地先の安全度マップ」が、5年ぶりに更新された。2014年の作製後初の見直しで、近年の河川改修や宅地造成の状況を反映させた。

 「地先」とは自宅の周りを指す。県ホームページ掲載のマップは住宅一軒一軒が分かるまで拡大表示でき、三つの想定(10年、100年、200年に1度の大雨)ごとの浸水リスクを確認できる。現実の被害は大きな河川のそばだけでなく、中小河川や水路の周辺、低い土地で起こることが少なくないが、それも計算に入れたマップを公表しているのが滋賀県の特色だ。

 関東、東北など広範囲が被災した昨年の台風19号では、想定外の中小河川の氾濫が相次いだ。事前のリスク周知が不足していたために、想定どおりに浸水した地域で多くの命が失われたケースもあった。

 今年も梅雨が近づく。自分のまちのハザードマップをいま一度確認しておきたい。自宅だけでなく、職場や学校、避難所までのルートの浸水可能性もチェックしたい。

 気候変動の影響で雨の降り方が極端化していると、たびたび指摘される。15年の水防法改正で浸水想定のもとになる降雨量の基準が変更されたが、それをハザードマップに反映した全国の市区町村は19年3月末時点で約3割にとどまる。

 浸水想定区域内では、意外にも人口が増加している。1995年からの20年間で、滋賀県で12・3%、京都府で1・4%、全国では4・4%増加した。調査した山梨大の秦康範准教授によれば、地価が手ごろで中心市街地より開発しやすいため、人口減少時代に入った今も宅地化が進んでいるという。

 リスクに応じた地盤のかさ上げや、建物の工夫がきちんとなされている所もある。問題は、そうした対策も情報もないまま転入する人を、現状では防げないことだ。

 宅地建物取引業法は、業者に住宅購入者への水害リスク情報の提供を義務づけていない。治水対策として建築・立地規制をする仕組みもほとんどない。

 滋賀県は条例で、ハザードマップなどの内容を説明する努力義務を業者に課している数少ない自治体だ。浸水警戒が特に必要な区域については住民合意の上で建築規制をかけ、近くに避難場所がなく、土地のかさ上げもない場合は住宅の新改築を原則許可しないと定めている。

 県には、こうした滋賀モデルともいえる取り組みをもっと内外に発信し、人々の防災減災の関心や議論を喚起してもらいたい。命を守ることに着実につながるからだ。

 計画凍結中の大戸川ダム(大津市)の建設促進に転じるなどハード事業への回帰がみられる滋賀県だが、仮に着工が決まったところで、時間も費用もかかる工事が完了するまで自然災害は待ってくれない。より安く早くできる治水施設の調査研究や高リスク地区外への人口誘導、家屋耐水化の助成拡充など、居住地の安全性を高める取り組みが欠かせない。