世界のリスクにならないか、心配になる。新型コロナウイルスの感染者が急増する南米ブラジル。「ただの風邪」と言い放つボルソナロ大統領が、感染拡大に無頓着な振る舞いを続けているからだ。

 ブラジルの感染者数は、米国に次いで2番目に多い(24日現在)。1日で2万人前後のペースで増えている。世界保健機関(WHO)は、南米が感染拡大の「新たな中心地になった」と警戒する。その最大の流行国がブラジルだ。

 これから南半球は秋から冬になり、さらに感染が広がる恐れがある。感染爆発が起きれば、北半球で予想される第2波、第3波の流行はより大きくなりかねない。

 経済活動の段階的再開を図る日本など東アジアや欧米の国々にとって、アフリカとともに南米での感染拡大は気になるところだ。

 ところが、ブラジル政府の対応には首をひねらざるを得ない。感染者が33万人を超え、世界で2番となった当日、保健省のホームページの見出しは「ブラジルで13万5430人が回復」だった。

 実は、ボルソナロ氏は医師出身の保健相を2人続けて辞任に追い込み、経験のない軍出身者を暫定保健相に据えている。効果が疑問視される抗マラリア薬の解禁に抵抗したからで、辞任後に解禁を実現している。

 ブラジルでは、州や市が外出自粛要請や商業施設閉鎖などの規制を実施している。ところが、経済優先を主張するボルソナロ氏は規制解除を求め、率先して規制を破りもする。感染を軽んじる言動は「大統領リスク」と呼ばれ、批判が絶えない。

 一方で実業家や商店主らの一定の根強い支持があるのも事実だ。厳格な規制に反対し「働きたい」と訴えるデモと、大統領に抗議して鍋をたたく行動が両極にあり、社会の対立と混乱の中で感染は広がっているという。

 結局、取り残されるのは弱い立場の人たちだ。全国で1200万人以上が住む貧困地区「ファべーラ」で感染が拡大していると伝わるが、実態は分かっていない。

 政治の怠慢や失敗によって、感染は深刻度を増すと指摘されている。ブラジルだけでなく、米国でもコロナ対策をめぐり社会分断が見られる。感染拡大をもたらす政治のリスクを、軽くみるわけにはいかない。

 WHOが米中対立の場になっているのも、政治リスクではないか。感染拡大の抑止へ、各国協調の重要性は一層高まっている。