新型コロナウイルス特別措置法に基づく政府の緊急事態宣言が、全都道府県で解除となった。

 京滋など42府県が段階的に解除され、残っていた東京など5都道県もきのう、宣言を解かれた。

 解除の目安に照らせば、北海道と神奈川県は、直近1週間の新規感染者数が超過している。それでも政府は「総合的な判断の結果」だとして解除に踏み切った。

 感染拡大を防止する観点だけでなく、経済活動や国民生活への影響も考慮しての決定なのだろう。

 ただ専門家は第2波、第3波がくる可能性を指摘している。ウイルス対策の取り組みは、今後も長期間にわたって続くことになる。

 緊急事態宣言下であらわになった課題を点検し直して教訓を引き出し、生活を回復させながら「次」に備えねばならない。

 課題の一つは、宣言に伴って店舗などに休業要請を行う知事の権限に財源の裏付けがないことだ。

 特措法では首相が宣言を出し、知事が休業を求める。だが、政府は休業への補償に否定的で、知事らは要請に応じた事業者に支払う協力金の負担に頭を悩ませた。

 各都道府県の協力金は自治体間の財政力のばらつきを反映し、金額に多寡が生じた。地域で差があっては休業要請の実効性は高まらない。知事権限に見合う財源を保障し、支給額が一定水準となる仕組みを検討する必要がある。

 医療態勢も課題だ。そもそも宣言は、患者の爆発的な増加による「医療崩壊」を防ぐのが目的だった。だが、大都市を中心に専用病床が不足し、一般病院での対応も余儀なくされた。

 病床や機器だけでなく、それらを機能させるマンパワー不足も浮き彫りになった。相談件数の増加に保健所の業務は手いっぱいとなり、PCR検査も進んでいない。

 このままでは第2波が来た時に同じ混乱を繰り返すだけだ。早急に対策を進めなくてはならない。

 安倍晋三首相はきのうの記者会見で「流行をほぼ収束させることができた」とする一方、宣言下での出来事については「まだ検証する段階ではない」と語った。

 宣言解除に至った今こそ、この1カ月半の取り組みを謙虚に振り返る必要があるのではないか。反省のない首相が事態を改善させる指導力を発揮できるかは疑問だ。

 政府が提唱する「新しい生活様式」を巡り、職場や学校などでは模索が続くだろう。国民との信頼関係を築き直し、不安をやわらげる実行力が政治に問われている。