天皇はなぜ存在し続けてきたのか。源頼朝や織田信長ら権力者はなぜ自ら天皇にならなかったのか。日本史上重大な問題だ▼平清盛が後白河法皇を幽閉し院政を停止したり、承久の乱で鎌倉幕府が後鳥羽上皇を流罪に処すなど武力対決はあった。だが武家政権は表向き天皇の守護者であり続け、断絶させることはなかった▼簒奪(さんだつ)した権力は簒奪されるのが世の習い。「逆賊」とされれば権力維持は難しい。天皇は世俗的な権力こそ奪われたが、武家の行為を正当化したり調停する権威者として必要とされた▼「即位大礼の御儀(おんぎ)無益なり」。1502年、室町幕府の実力者細川政元は言い放った。中世末期の天皇は即位儀礼も満足に行えないほど困窮していた。その後豊臣秀吉や江戸幕府が資金を出し、京都御所の整備や儀式の復興が進む。天皇と武家は持ちつ持たれつだったとも言えよう▼天皇は長い歴史の中で姿を変えてきた。民主主義の今、政権の正統性を天皇が保証する必要はない。天皇陛下が震災の被災者たちに直接語りかけたのも、皇室が国民と向き合っていくことが大切と考えたからだろう▼多くの国で君主制が続いている。母国の歴史への思いは理屈だけでは説明できない。私たちにとって天皇とはどういう存在か、代替わりを機に改めて考えたい。