周辺の道は平らなのに、なぜかここだけ小さな高低差のある「西陣裏階段小路」、猫が出没する「招き猫ハッピー路地」、住民言い伝えの地名を冠した「鍋町(なべちょう)小路」…▼京都市上京区・正親学区の路地71カ所に今春、ユニークな愛称が付いた。いずれも地図には無い。所々に表示板が掛かる。授業で街歩きをした児童も案を出し、各町内会で話し合って決めた▼非常時の通報や避難で場所を特定しやすくする防災上の工夫だが、名前が付くと何げなく通り過ぎていた街の個性が際立ち、愛着も増す。京の市街地には幅4メートル未満の道が約1万3千本ある。木造の家並みや行き止まりも多く、耐震や防火、避難路確保が課題となっている▼一方で、こうしたエリアを「安全」と捉え直す動きもある。車が通らず、ご近所さんの目が届き、家賃も比較的安い。子育て世帯や若手クリエイターが移り住むのに、ぴったりではないか▼地元ギャラリー代表の飯高克昌さんと町家再生に携わる建築士冨家裕久さんが、路地の魅力を伝える企画を上京区で始めた。住民の了解を得て、子どもらが遊ぶイベントを重ねる。鬼ごっこや紙飛行機、地面にチョークで落書き。大人には街歩きで生活文化を感じてもらう▼暮らす人とはまた違う角度から、街への愛着が広がっていくといい。