鞍馬や花背の山道を歩いていると、暗い森の中で突然明るい場所に出くわす。見上げると、空がぽっかりと開けている。近くには根倒れした大木が横たわるか、幹の途中から折れたスギやヒノキが数本立ち尽くしている▼昨秋の台風が残した爪痕だ。無残だが、地表には青々と草がもえ、日だまりに小さな芽が顔を出している。上空に枝を伸ばし、日光を独り占めしていた高木が倒れたことで地面に光が届き、眠っていた種子が発芽したようだ▼人の手を借りず、樹木が自然に生え替わっていくことを天然更新という。森林生態学者の故四手井綱英さんは「後を継いでくれる稚樹がたくさん生えれば若木が成長して森林は永続する」と説く。1本の大木を延命させることに固執すると森を滅ぼすことにつながる、と▼全国の森で若い芽が育っていると想像すれば頼もしい。気掛かりは、シカによる食害だ。森の回復力を損なうほどに増えている▼旺盛な食欲で、むき出しとなった地表に大雨が降れば土砂崩れを誘発する。流出した土は川を浅くして氾濫を招く。土壌の流出は森の再生能力も奪う。芽を伸ばすための知恵はないものか▼きょうはみどりの日。梅雨や台風などの出水期は、すぐにやってくる。自然の回復力任せで放置すれば、憂いの秋となりかねない。