かつて祭りといえば賀茂祭(葵祭)を指した。清少納言は<祭りのころいとをかし(大変素晴らしい)>と「枕草子」に記し、初夏の情景とともに近づく賀茂祭に心ときめかす都人をほほ笑ましく描いた▼路頭の儀は15日、薫風爽やかな都大路に平安絵巻を繰り広げる。京都御所から下鴨、上賀茂両神社へ向かう優雅な祭列は昔も今も人気が高い▼だが、昨今の人手不足が伝統の祭りに影を落とす。傘などの調度品を持ったり、貴人に従ったりする白装束の「白丁(はくちょう)」を演じるのは例年、学生アルバイト約200人。今年は確保できず、葵祭行列保存会は急きょ、広く市民にボランティア参加を呼び掛けた▼すると、窮余の一策にもかかわらず問い合わせが殺到して、すぐに予定の50人に達したというから驚きだ。対象を60代後半まで広げたのが功を奏し、遠方からも申し込みがあったという▼災害支援などでボランティアが注目され、東京五輪・パラリンピックの大会ボランティアは目標の8万人に対し、20万人超が応募する盛況ぶりだ。世のため、人のためだけでなく、自分のためにも有意義だからか▼葵祭は、先祖代々携わる人をはじめ、多くの「ご奉仕」で受け継がれてきた。きっと清少納言も舞台裏を支える新たな試みを「いとをかし」とみるに違いない。