一年の中で最も好きな月に5月を挙げる人は多いかもしれない。緑と風、そして光。日照時間が長く、青空のもとでは幸せを感じる▼詩人の萩原朔太郎もこの季節を愛した。自らを「五月の貴公子」と称し、<五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする>(詩集「月に吠(ほ)える」)とつづる。緑の光景に魅せられた▼風の心地よさは多様な言葉を生む。薫風は南薫とも言う。同じく穏やかな南よりの景風、若葉青葉をそよがせる若葉風、爽やかだが強い風を青嵐(あおあらし)…。古人の豊かな感性を思う▼この5月は新しい風とともに明けた。新天皇の即位である。令和のスタートに合わせて、京滋でも多くのカップルが婚姻届を出し、カウントダウン結婚式なる記念イベントも。祝賀ムードは落ち着いたが、社寺は今も新元号の御朱印を求める参拝者でにぎわう▼令和の典拠は、万葉集巻五の<初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ>。考案者とみられている国文学者の中西進さんは、この風を「平和をもたらす和やかな風」とし、国民の目標になると話す▼若葉が芽吹いたばかりの樹林を吹き抜ける風を新樹風と呼ぶ。みずみずしさを届ける、そんな新鮮な風も望みたい。人口減少や高齢化の中で、若い世代が生き生きと力を発揮する―。令和の風を起こさなければならない。