「これからは、下がりすぎる物価にどう対応するかを考えて」。今年2月に亡くなった作家の堺屋太一さんが20年以上も前、当時の経済企画庁長官に就任した際、述べた▼そのころから、日本経済はデフレ脱却に難渋している。将来を見通す眼力に驚くしかない。間を置かず、堺屋さんが発案したのは「景気ウオッチャー調査」、いわゆる街角景気だった▼タクシー運転手やスナック経営者らを含む幅広い層から消費の現場の声を聴き、トレンドを探る。4月分では、現状判断が前月より改善していた▼「消費増税を前にリフォームや家電の買い替えがありそう」(量販店)、「改元に伴いレストランの消費が増えた」(ホテル)という。明解である。一方で、先行きについては米中貿易摩擦の影響が懸念された▼内閣府は3月の景気動向指数を発表し、経済情勢の基調判断を6年ぶりの「悪化」とした。これからどうなるのか。何を信じるのか。過剰な反応は慎むべきだが、不安が募るのもまた人情である▼政府の公式見解は今月下旬の月例経済報告で示される。かつて「停滞」と「弱含み」では景気の悪い表現はどちらか調整を要し、堺屋さんが「霞が関文学の極致」としたほど分かりづらい。これまであった「緩やかに回復」との文言を、どうするのだろう。