動物にも、強運の持ち主がいるようだ。いや、全ての生命は奇跡ともいえる運の積み重ねの上にあるのかもしれない。「宇治川の鵜飼」で魚を追うウミウの話である▼5年前に国内初の人工ふ化で生まれた雌の「ウッティー1号」が先日、初めて卵を産んだ。「有精卵ですね。血管が見えます」。獣医が告げると、鵜匠らが歓声を上げた▼1号自身、母親が5個産んだ卵から唯一かえったウミウだった。小柄で足も弱く、生後9カ月は小屋に戻さずに、人が付きっきりで育てた。「自分を人間と思っていたはず」と親代わりの鵜匠、沢木万理子さんは振り返る▼何とか無事に成長しただけでなく、2世を待望される身となったのも偶然だった。鵜匠が飼育小屋を隔てる柵を閉め忘れ、翌日、野生由来の雄と仲良くなっていた。一緒にすると、巣作りを始めた▼2代にわたる人工ふ化に挑む。「何もかも前例がない中で、やっとここまで来た」と沢木さん。もちろん偶然だけではない。餌のやり過ぎを避けたり、カップルが落ち着けるよう巣の回りにすだれを巡らせたり…。少しでも繁殖環境を良くしようと工夫を重ねている▼小さな卵はそんな努力の結晶でもある。有精卵のふ化率は50%。まだ安心はできないが、鵜匠たちは信じる。「彼女は強運の持ち主だから」