天気、天候を表す英単語weatherには「風上」の意味もある。熟語のto keep the weather of(風上を取る)は、転じて「牛耳る」の意にも使われるという▼その由来は昔の戦闘にある。弓矢で戦う場合、矢の飛ぶ射程は風上からのほうが伸びるからだ。風上を取ることこそ勝利への第一条件だったと、気象研究家の故根本順吉さんが随筆に記している▼国会に吹く衆院の「解散風」も風上からである。先月、菅義偉官房長官は野党による内閣不信任案提出が解散の理由になると明言。安倍晋三首相も「風は気まぐれ」と思わせぶりに語った▼参院選とのダブル選に持ち込み、野党の選挙準備が整わないうちに政局を牛耳ろうとの狙いが透ける。何のための解散か-という疑問が生じても気になるまい。政界には「理屈は後からついてくる」と、身もふたもない言い方がある▼安倍氏は過去2回の衆院解散で、消費増税延期や少子化・北朝鮮問題を大義に挙げた。しかし、真意はそこになかったことを多くの人は見抜いていたはずだ▼信を問うなら、国民に誠実に向き合う姿勢こそ必要だ。首相通算在位日数が歴代3位となっても、選挙に勝って権力基盤を固めたいと見透かされれば「宰相の風上にも置けない人」との批判を招こう。