英国と欧州連合(EU)の離脱合意案が、英下院で否決された。

 離脱の期日は3月29日に迫っているのに、昨年11月に英政府とEUの交わした約束事が、ほごにされてしまいそうだ。折り合いを欠いたまま離脱したのでは、欧州の分断を招き、世界経済に動揺を与えるだけだろう。

 議会の決定は英国民の意思といえようが、国際的な観点からは、誠に残念な結果である。

 論点は、採決までにほぼ集約されていた。

 合意案では、英領北アイルランドと地続きのEU加盟国アイルランドとの国境に、税関を置かずに関税を徴収する方策が見つかるまで、英国全体をEUの関税同盟に事実上残すとされた。

 これに対して離脱派は、「英国の主権を取り戻せない」と強く反発し、下院で否決に回った。

 とはいえ、EUから離脱するのであれば、加盟国との間に税関を設けるのは避けられない。アイルランドとの国境だけには置かない、との主張は通らない。

 税関を設けない場合は、関税同盟に残る必要がある。このため、決着を先送りするかたちの合意案は現実的ともいえる。

 メイ英首相は、昨年12月の採決を延期してまで議員らの説得を続けたものの、採決では圧倒的な大差で否決された。

 21日までに今後の対応方針を示すというが、すぐに妙案が浮かぶ保証はない。離脱の期日延期を模索するのが、関の山だろう。

 与党の大量造反を招き、閣外協力する北アイルランドの地域政党からも反対された。内閣不信任案を可決されたのに等しい。

 これでは、事態の収拾をメイ氏に期待することは、もはや不可能ではないか。

 EU側は、合意案が「最善かつ可能な唯一の案」だとして、再交渉には応じられないとする。それだけに否決は、混乱を伴う合意なき離脱の危険性を高めると認識している。

 英国内では、モノやカネの流通が滞り、市民生活にも影響の及ぶことが懸念されているという。日本はじめ英国に企業の進出する各国も、供給網などに不測の事態が生じるのを恐れていよう。

 合意案を否定し、なおかつ混乱を回避するのは難しい。ならば、離脱を棚上げするしかないとの声が上がっている。再度、国民投票を行うことも視野に入れ、英国民が何を望んでいるのか明確にしないと、解決策は見いだせない。