歌手の太田裕美さんといえば「木綿のハンカチーフ」だが、その次に売れたのは「赤いハイヒール」。1976年の作品で、ヒット請負コンビと呼ばれた松本隆、筒美京平両氏による作詞作曲だ▼「木綿…」ほどポップではないけれど、歌詞は「木綿…」と同様に、地方から都会へ出た若者の物語。「お下げ髪」で東京に来た女性が夢だった赤いハイヒールを買うのである▼舗装された道や屋内でないとハイヒールは使えない。70年代、地方にはまだ地道が残っていた。ハイヒールは都会や繁栄の象徴だったのかもしれない▼女性にかかとの高いパンプスの着用を義務づける職場がある。「強制はやめて」と訴える女性たちがネットで署名を呼びかけると、4カ月で1万8千人超の賛同が集まった▼足腰や内臓にも重い負担がかかるのに、仕事によっては、さらに笑顔や冷静さも求められる。こんな理不尽を女性にだけ押し付けるのはおかしい-。もっともだと思う。気づかなかったことが恥ずかしい▼太田さんの歌は意味深で、赤いハイヒールは一度はくと止まらなくなる。「誰か助けて」というフレーズは、現代女性の訴えを先取りしたかのようだ。そういえば、男性のノーネクタイはすっかり定着した。やめてしまえば、どうということもないと思うのだが。