雨の季節だ。日本語には雨にまつわる言葉が千以上もあるという。降り方によって、季節、地域によって、気配をまとう▼この時季、青葉に降りかかる雨を「青葉雨」と呼び、したたり落ちる水滴を「青時雨」「青葉時雨」という。梅雨に換わる言葉も、黴雨(ばいう)、麦雨(ばくう)、梅霖(ばいりん)、五月雨、黄梅の雨、と多様だ▼日本の1年間の平均降水量は約1700ミリで世界平均の2倍にもなる。それゆえ暮らしに身近で、昔も今も自然を感じる瞬間なのかもしれない▼「雨は花の父母」の言葉もある。草木を育み、花を咲かせる雨を、平安時代の詩文集「和漢朗詠集」は父母にたとえる。さらに、わけへだてなく公平に降り注ぐことも記す。まさに命の恵みだ。子どもの虐待のニュースが相次ぐ今、雨のたとえは深く胸にしみる▼「梅雨出水」の言葉も忘れてはならない。昔から梅雨の後期は豪雨が多く、河川が増水して氾濫することがあった。昨年7月の西日本豪雨の被害も記憶に新しい▼水害から3カ月ほどたった昨秋、綾部市黒谷町を訪ねた。水の利を生かした谷あいの和紙工房には、そばを流れる黒谷川が流れ込み、5基あった漉(す)き舟のうち3基を押し流したと聞いた。激しい水の力をまざまざと見せつけられた気がした。恩恵も戒めも、受け継がれる言葉に刻まれている。