よし笛の音色を聴くと、心地よいのはなぜだろうとよく思う。低音から高音まで伸びやかで透き通るような音は素朴で飾り気がなく、「癒やしの音」とも評される▼今では滋賀を中心に各地にサークルが生まれ、愛好者の数も増えているが、きちんとした音階を持つ縦笛楽器として登場したのは1999年だから、さほど古い話ではない▼その考案者である近江八幡市の菊井了(さとる)さん(71)によれば、一定の太さのヨシを用い、マウスピースに竹を使うなど工夫を重ねて2オクターブの音域が出るようになったという▼よし笛と称されるものは古くからあったが、簡単な音が出る玩具のようなものが大半で、唱歌からポピュラー、クラシックに至るまで幅広く演奏できるものは国内になかったそうだ▼楽器とヨシとの縁は深い。木管楽器のルーツはヨシ製の笛と言われるし、中南米の民族楽器ケーナなども元はヨシで作られていた。雅楽の篳篥(ひちりき)もリード部分はヨシである。誕生から20年の節目を迎えた菊井さんのよし笛は、そんな歴史ともつながっている▼琵琶湖のヨシ群落は92年に制定された県の保全条例で一定回復したものの、目標値の道半ば。「ヨシ自身が発する自然な響きを通し、命を育む水環境に目を向けてもらいたい」。菊井さんの変わらぬ願いである。