閣議決定は、時の政府の統一見解を示す。決定された「閣議書」は皇居に送られ、天皇の印を受ける。1人でも反対の閣僚がいれば決められず、首相が罷免した上で決定する▼2005年の郵政解散では、小泉純一郎首相の解散方針に異を唱えた閣僚の辞表を、小泉氏は受理せず罷免した。民主党政権でも沖縄の米軍基地をめぐり鳩山由紀夫首相が福島瑞穂行革相を罷免した▼かくも重みがある閣議決定だが、安倍晋三政権では理解に苦しむものも多い。先日も「老後に2000万円必要」という金融庁審議会の報告書に関し「回答は控える」との答弁書を閣議決定した▼報告書は衝撃的だが、年金についての根本的な議論の契機になったはずだ。諮問した政府に葬り去られ、執筆者もあ然としているのではないか▼強弁とも思える閣議決定はこれまでも議論封じに使われてきた。森友問題では「政治家からの働きかけはなかった」(17年)、財務事務次官のセクハラ問題では「セクハラ罪という罪はない」(18年)として、野党の追及をかわした▼政府の統一見解で「回答を控える」のは、議論をしない、という意思の表明だろうか。安倍首相は「国民に誤解を与えないことが大切」と強調するが、不都合な事実を避ける姿勢こそ国民に不安を与え、誤解を招く。