「空港効果」といっても経済的な話ではない。作家の江國香織さんにかつて、こんなタイトルの印象的なエッセーがあった▼空港の非日常性にひかれて、用もないのに遊びに行くという話だ。傍観者として役割もなく立っているのは気持ちいい。「自分のいる場所が、はっきり確認できる」とつづる▼江國さんの空港好きは、名短編「犬とハモニカ」も生む。外国人青年や老婦人、大家族…。ロビーを行き交う人々が抱える、さまざまな事情を描く。関西空港の警備のニュースに、そんな一連の作品をふと思い出した▼G20大阪サミットの玄関口として多くの要人を迎える。コインロッカーは使用できず、ごみ箱は一部撤去され、警察官による手荷物検査もある。こんな時に用もなく遊びに行ったら、ただ怪しまれるだけかもしれない▼日本が初の議長国となるG20は世界規模の課題がテーマとなる。だが、行き交う首脳たちが抱えるのはさまざまな利害対立だ。「自国第一」を掲げるトランプ米大統領の登場で、G20の形骸化は進んでいる。協調体制は力を失っている▼参院選に向けて安倍晋三政権は外交成果をアピールしたい考えだが、どこまで役割を果たせるかは分からない。日本のいる場所がはっきりする―そんな効果しかないとしたら、ちょっと寂しい。