仲の悪い者同士が同じ場に居合わせることを「呉越同舟」という。中国の春秋時代、呉と越の両国は敵対して憎み合い、呉越は仲の悪い例えとされていた▼ただ出典の「孫子」の意味合いはだいぶ違うという。呉越の人々が舟に乗り合わせ、大しけで難破しそうになったらどうするか。助かりたい一心で、憎しみなど忘れて一致協力するに違いない(守屋洋著「中国古典 一日一言」)▼G20大阪サミットがきょう開幕する。2008年のリーマン・ショックで世界経済が難破寸前となり、各国首脳級の緊急会合が初めて開かれた。未曽有の危機克服に向け、呉越同舟のごとく先進国や新興国といった立場を超えて鳩首(きゅうしゅ)凝議、その後定例化した▼「大阪封鎖」とやゆされる厳戒態勢の中、メンバー以外に招待国や国際機関も加わり、実際には計37の国・地域や機関の首脳が集まる。ただ課題は米中貿易摩擦など互いの立場や利害が複雑に絡み、一筋縄でいかない難問ばかりだ▼ところで行動を共にしながら、実は考えや目的がまったく異なっているさまを「同床異夢」と表現する。こちらも中国の古典にある言葉で、よく呉越同舟と対比される▼さて多国間協調へ呉越同舟で結束できるか、それとも同床異夢のまま終わるのか。晴れ舞台で議長国の力量が試される。