一度は途絶えかけた織物技術を伝承する「丹後藤織り保存会」と「相楽(さがなか)木綿の会」が先日、初の合同作品展を京都市内で催した。京都府域の北と南、二つのグループが結び付いた▼今年は藤織り講習会を始めて35年、相楽木綿伝承館の開設10周年という節目。力強さを感じる自然な色合いの藤織り、色糸で縞(しま)や絣(かすり)をモダンに表す藍染め地の相楽木綿。素材や製法は違っても、柔らかな風合いと手触りが共に心地よい▼「手の記憶」を継いでいきたい。織り手育成に努める両会の代表、坂根博子さんと福岡佐江子さんは共通の願いを持つ▼宮津市上世屋に伝わる藤織りは、山でつるを切り、湯がいて川でさらし、指先で糸を紡ぎ、織り上げる。当初の受講者は集落のおばあさんたちから一連の工程を学んだ▼木津川市の相楽木綿は昭和初期まで農家女性の副業だった。旧家に残る布を収集し、作業を見た記憶のあるお年寄りから聴き取り、織りを繰り返して再現した▼当たり前に受け継いできた生活文化だが「この情熱と馬力で伝えなければ消えてしまう」。両会の活動を後押ししてきた横出洋二・府立山城郷土資料館学芸員は言う。それぞれの地元で積み重ねた手の記憶は、AI(人工知能)が進化しても再現できまい。地域の宝ともいえる技を大切にし続けたい。