JR京都駅から山陰線の快速電車で約30分。南丹市の八木駅の木造駅舎が建て替えられることになった。1934(昭和9)年築で、正面出入り口の上にある丸窓が特徴だ▼旧八木町の玄関口。戦時中は戦死者の遺骨を迎え、京都市内から集団疎開してきた学童たちが降り立った。戦後、夏は桂川の水泳場に泳ぎに来た子どもで、年末は商店街大売り出しの買い物客でにぎわった▼この駅舎を惜しむ有志が「八木駅舎を愛する人の会」を結成した。「駅舎がよくまちの話題に上ったんです」。メンバーの1人、藤村香菜子さん(29)はいう。都会育ちで、駅近くの元理髪店を改修し、情報発信拠点「わざどころPON」を開いて2年余り。住民たちの思いに触発された▼会は元国鉄職員の講演会を催し、ギャラリーに駅舎の写真を飾っている。多くの人に思い出話を寄せてもらい、冊子にまとめる計画だ▼地方で暮らす人の足が鉄道からマイカーに取って代わり、駅前商店街が活気を失って久しい。小さな駅舎が最晩年、人々を結びつけ、地域の記憶を呼び起こしている▼27日には「ありがとうセレモニー」が駅前で催される。中学生が吹奏楽を奏で、住民が八木音頭を踊る。「ふるさとを離れた人たちが久しぶりに戻って来てくれたら」。藤村さんは願っている。