ハンセン病患者を隔離する誤った国の政策は、家族にも深刻な差別や偏見をもたらした。責任は政策を主導した旧厚相だけでなく法相や文科相、国会にもある-▼全国の元患者の家族が国を相手に熊本地裁で起こした裁判の判決である。家族への差別はいまも続く人権侵害だと認め、その解消に向けた国の不作為を厳しく断罪した▼差別の深刻さを語る光景が判決の日、熊本地裁前にあった。原告は561人だが裁判所を訪れた人は少数。多くは匿名で、親やきょうだいが患者だったことを家族に秘したままの人もいる。弁護団によると、裁判を機に離婚した人もいる▼家族の困難に責任はない、という国に対し熊本地裁は、隔離政策は家族が差別される「社会構造」を生み出したと言い切った。国の責任をここまで明確にした判決は最近、珍しいのではないか▼最高裁に勤務した元裁判官の瀬木比呂志・明治大教授は著書「絶望の裁判所」で、日本の裁判所は「全体としての秩序維持、社会防衛」を優先させ、個々の市民が願う正義を後回しにする傾向がある、と吐露している▼熊本地裁の裁判官は少数派なのかもしれない。差別を生んだ責任を認めてほしい、という原告の思いに寄り添った。原告団は控訴するなと訴えている。国はその声を受け入れるべきだ。