豊臣秀吉が築いた大坂城は、大坂夏の陣で天守閣もろとも炎上する。後に徳川秀忠が盛り土をし、石垣を積み直してより大規模な天守閣を築くが、それも1665年に落雷で焼失した▼現在の天守閣は、長い空白を経て1931年に「大坂夏の陣図屏風(びょうぶ)」を参考に秀吉の城を模して造られた。日本初の鉄骨鉄筋コンクリート造天守閣で、当初からエレベーターまで備えていた▼そのエレベーター設置について、安倍晋三首相がG20大阪サミットの夕食会で「大きなミス」と発言し、障害者への配慮が足りないと批判されている▼首相は「バリアフリー社会に異を唱える発言ではない」と釈明し、「遺憾」と語ったという。ならば伝統的な城に近代的なものは似合わないとでも言いたかったのだろうか。だが今の大阪城は堂々たる近代建築だ。豊臣・徳川時代の木造建築ではない▼エレベーターが「ミス」なら、鉄筋コンクリートの城自体が巨大なミスの塊ということにならないか。大きなミスをしたのは、むしろ首相の方だろう▼名古屋城の木造復元計画でも設置の是非が焦点になっている。市は史実に忠実な復元のため導入しない方針だが、文化財価値を大きく損なわず、建築構造上も問題がないならできるだけ設けたい。人を拒まない城へ知恵を絞ってほしい。