森でシカが増えると、川の魚は増えるか、減るか。何の関連もないかのような問いだが、調べた研究者がいる。京都大の中川光特定助教が2007年から18年にかけ、南丹市美山町の京大芦生研究林の由良川本流を泳ぐ魚の数と種類を数えた▼結論は川底に石が多い環境を好むウグイが減り、砂底が好きなカマツカという魚が増えた。シカが下草を食べたことで地面がむき出しとなり、雨で流出した砂が川底を埋めたためと推論する▼この研究成果に琵琶湖博物館の桑原雅之総括学芸員は「石につくコケを食べるアユも減る可能性がある」と指摘する。石が砂に埋もれるとコケが育たないからだ▼美食家北大路魯山人は由良川中流の京丹波町和知で上がったアユを「いちばん」と記した。美山産は近年も品評会で準グランプリを連続獲得している。だが下流部では海産アユの天然遡上(そじょう)が激減しているという報告もある▼シカの食害は全国的に深刻化しており、河川環境や魚への影響は全国どこの川でも起こりうる。国は駆除を奨励しているが、効果が表れるには時間がかかりそうだ▼森からの土砂の流入は川を浅くし、洪水の要因ともなる。一見、関連性がないようでつながっているのが環境問題のやっかいなところ。ウグイが減ったぐらいで…と看過はできない。