山道で道標を見つけると、目的地の方角や距離が分かるのでほっとする。しかしこれが風見鶏のように風を受けて回るとなると、面食らうばかりか遭難の原因にもなる▼そんな目を疑う動画が5月、インターネット上で公開された。撮影場所は京都府北部の大江山連峰。最高で800メートル級の山々からなり、縦走を楽しむ初心者も多い。設置した地元のトレイルクラブが調べてみると、3カ所の道標が壊されていた▼「自然災害や動物によるものではない」という。人が方向板を力ずくで動かして壊したとして、6月に宮津署に被害届を出した。クラブの高崎洋一朗会長(68)は「命に関わる問題だ」と憤る▼登山歴40年の高崎さんは「視界が悪く道が分からなくなったときに道標に助けられた経験がある。見つけたときは生きた心地がした」と語る▼警察庁によると昨年の山岳遭難事故は全国で2661件(前年比78件増)。内訳は「道迷い」が最多で約38%を占める。近年、道標が壊されたり偽の矢印が岩に書かれたりして、道に迷ったというニュースも散見する▼<なほ遠く往(ゆ)けと枯野の道しるべ>山口速。道標は「その先へ」と背中を押してくれる。親族や恩師を道標にたとえて人生の手引き役と表現する場合も多い。いたずらで壊した、では済まされない。