七夕の日に生まれた男の子は天の川から「天真(てんま)」と名付けられた。「この出産を忘れたくない」。1歳を迎え、両親は地域のつながりの大切さをかみしめる▼福知山市大江町金屋の古高多聞さん(29)、桜子さん(29)。昨年7月7日早朝、陣痛が始まる。西日本豪雨で同町が大規模に浸水した日だった。市民病院へ向かおうとしたが、道路は寸断され、焦りと不安を抱えて引き返した▼市民病院に勤務する看護師碓井美穂さん(44)は、消防団の夫から2人のことを聞き、避難所前で合流した。水かさが増し孤立する前にと考え、近くの大江分院行きを決断する▼分院に産科はないが、本院と連携し、内科医や看護師と準備した。「一緒に乗り越えよう」。碓井さんは2人を励まし、桜子さんも覚悟を決めた。診察室の手すりのないベッドで痛みに耐えた▼天真ちゃんはすくすくと育っている。2900グラムだった体重は9200グラムに。最近、保育園に通い始め、新たな世界に目を輝かせる▼七夕の日、両親は自宅に成長の写真を飾った。「いろんな人の支えがあっての人生なんやで」―大きくなれば伝えたい。消防団の機転、碓井さんの決断と行動力、病院スタッフの協力、新生児用ミルクを届けた住民…。命を大事につないだ連係プレーは地域の希望でもある。