危険タックルやパワハラなど不祥事が相次いでいた昨年6月、スポーツ庁の鈴木大地長官がメッセージを発信した。タイトルは「スポーツ・インテグリティ(高潔性)の確保のために」だった▼選手の生命、安全を脅かす行為は許されないとした上で「勝利至上主義といった悪(あ)しき体質・旧弊が指摘されている」と警告した。手段を選ばない指導は許されないが、一方で競技スポーツの現場では勝利が最大目標なのも確かだ▼公認野球規則は「相手より多く得点し勝つことを目的とする」。ラグビーの競技規則では「目的はできる限り多く得点を挙げること」と示す。どこまでも勝利を追求する姿勢がなければ、真剣勝負もライバル物語も茶番劇になる▼ラグビー日本代表を率い、銀行ディーラーとしても活躍した故宿沢広朗さんの座右の銘は「勝つことのみが善である」だった。勝利哲学を描いた本では「名誉にかけてルールを破らないということで勝利至上主義とは一線を画している」という考え方が紹介されている▼勝ちたい選手と勝たせたい指導者。指導者に求められるインテグリティとは、ぎりぎりで双方のバランスを模索することだろう▼心血を注いだスポーツの醍醐味(だいごみ)を味わえるのはフェアに戦えばこそ。選手は一心不乱に勝利を追い求めてほしい。