「フィクサー」といえば、政治や経済の裏でうごめく黒幕的人物というイメージである。「修復する」などの意味の英語fixから来る。米国では、事件をもみ消す悪徳弁護士を指す▼トランプ米大統領もフィクサーを抱えていた。昨年まで12年間務めた弁護士マイケル・コーエン氏。雇い主の暴言やご乱行の裏処理に奔走した同氏の米議会証言(今年2月)記録は驚くべき内容に満ちている▼「黒人が率いる国で『肥だめ』でない国があるか」「黒人は愚かだから自分には投票しない」-。トランプ氏はこんな持論を得意げに披露した。敵対する個人や団体をコーエン氏に脅迫させたことも「500回ほど」あった▼フィクサーという止め役が不在だからか、トランプ氏は非白人の女性議員に対して「国に帰ったらどうか」と攻撃を始めた▼「国に帰れ」は歴史的に黒人や新移民を排除するために使われた。トランプ氏は支持基盤の白人保守層を意識したのだろう。米国の分断をfixするどころか、堂々と一線を越えたのではないか▼日本でも同様の言葉が京都朝鮮初級学校へのヘイトスピーチ事件で繰り返された。ヘイト団体は今も各地で発している。問題は「ああ、またか」と思ってしまいがちなことだ。憎しみと分断をもたらす言葉に慣れてはならない。