梅雨明けが待ち遠しかったろう。朝からセミの声がにぎやかだ。競うように大合唱を響かせては急にやむ。気まぐれな通り雨に重ねて、せみ時雨と呼ぶのも趣深い▼夏本番を告げる声である。騒々しく、暑苦しさが増す日もあれば、夕暮れに涼しく感じることもある。人の心持ちでも聞こえ方が変わる▼数年も地中にいて梅雨明けが分かるのだろうか。各気象台が調べているアブラゼミの初鳴日はことし、京都が7月8日、彦根が同12日で平年より7~9日早かった。外へ出始めていたが、遅い梅雨に阻まれた分、余計に声を張り上げるのかもしれない▼近年、アブラゼミが都市部で減る一方、南方系のクマゼミが東北まで生息域を広げているという。温暖化や都市化の影響ともされる。環境の変化から大合唱の声色も毎年微妙に違うのだろう▼今夏に聞くせみ時雨は、何か胸をざわざわさせる。きょうは相模原市の障害者施設で19人が犠牲になった殺傷事件から丸3年。懸命に生きてきた尊い命が理不尽に奪われる惨事が、京都でも先週に起きてしまった▼「もっと生きたい」「やりたいことがある」の叫びにも、国内外の多くの「悔しい」「なぜ」の声にも聞こえてくる。もしや、社会の中に深くたまる不満や憎悪が交じっているなら、聞き分けねばならない。