夏空の下、草津市の畑で涼しげなコバルトブルーの花びらが揺れている。ツユクサの変種で、市の花でもあるアオバナだ。特産の青花紙を作るのに農家が手摘みする光景は江戸後期に歌川広重の浮世絵にも描かれ、草津の風物詩となってきた▼アオバナ色素は水で流すと消えるため、友禅染の下絵描きに重宝される。ただ液体だと劣化が早いので、搾り汁を和紙に吸わせ、紙の重さが4倍になるまで刷毛(はけ)で塗り重ねたのが青花紙。かさばらず保存がきき、紙片を水に浸すだけで染料に戻る▼感嘆すべき先人の知恵だが、全国でも唯一の形態という。そこで国の研究機関が3年前から市教育委員会と共同で初の本格調査を行い、生産工程や成分分析、文化的価値を報告書にまとめた▼詳細な調査を急いだ背景には将来への危機感がある。かつては数百に上った生産農家も着物離れや化学染料の登場で需要が減り、今は3軒になった▼「生産者が元気なうちに技術継承が必要」と市教委の岡田裕美学芸員(28)は訴える。繊細な表現に不可欠として使い続ける染織家も少なくない▼市も無形文化財指定を目指し後継者育成の講習会を始めたが、保存団体の確立など課題は多い。そのはかなさで優美な伝統産業を裏で支えてきた地域の宝。消すことなく次代に継承したい。