時間が止まるときの音があるとしたら、こんな感じかもしれない。エリック・サティの「ジムノペディ」は映画やドラマのBGMでよく使われる。聞けば「ああ、あの曲」と、大方の人は分かるはずだ▼京都アニメーションが手掛けた2010年の映画「涼宮ハルヒの消失」でも使われた。人気のハルヒシリーズでも「消失」が一番好きというファンは多い▼クリスマスの近づいたある日、ヒロインのハルヒが世界から消えてしまう。何者かが時空を改変した―という学園SFだ。その日は12月18日だが、今となっては嫌な符合に思えてしまうのが悔しい▼7月18日の事件から10日余り。時が止まったままの人は世界中でどれくらいいるだろう。京都府警は犠牲者全員の身元を特定した▼「消失」の監督・武本康弘さんは安否不明になっている。作画や美術のスタッフも…。クラシック好きの監督がサティの使用を考えたそうだ。「一生懸命作ったんで、ぜひ、隅々まで見て頂(いただ)きたいです」。公式ガイドブックにそんな言葉があった▼映画では最後に、本来のハルヒのいる世界が取り戻される。ラスト近くで描かれる、息をのむほど美しい神戸の夜景が印象深い。兵庫出身の武本さんの、震災への思いもあったのではないだろうか。京アニを、世界を取り戻さねば。