就職面接のセクハラ質問に耐えて広告会社に入ったが、大事な仕事は男に任され、給料は男より少ない。結婚して出産したら、会社に居場所はなかった-▼女性が直面する理不尽を描いた韓国の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」が日本国内で売れている。外国文学では異例の13万部を突破した▼1982年生まれの韓国女性で一番多い名前が「キム・ジヨン」という。主人公は韓国の平均的な女性という設定だ▼印象的な場面を一つ紹介したい。キム・ジヨンは学生時代、通学路で見知らぬ男につけられ、怖い思いをする。だが父親は、スカートが短いから悪い、と娘をなじる。「日本でも」と思った読者は少なくないのではないか。被害女性に責任がある、というもの言いである▼淡々と描かれる隣国の社会は女性に厳しく、男性を甘やかす。それがとりわけ女性の読者の共感を呼んだのだろう。日本と同じだ、と。同書だけではない。いま、韓国の最新小説の翻訳が相次いでいる。韓国文学を特集した雑誌「文藝」の今秋号は創刊以来、86年ぶりの3刷となった▼徴用工や貿易規制の問題を巡り、日韓政府が激しく対立している。しかし、あくまで政府間のことだ。文化の往来はせき止められない。むしろ、こんな時だからこそ、韓国の小説を手に取りたい。