少年期に岩石採集に熱中した宮沢賢治の童話「気のいい火山弾」は、野原の黒い石が主人公だ。体を巻いている帯状の模様が「みっともない」と周囲の石たちからばかにされる▼それでも黒い石は決して怒らない。ところが、調査に訪れた学者が「こんなすてきな火山弾は大英博物館にもない」と絶賛、丁寧に包まれて大学へ運び出された-▼黒い石に刻まれた帯模様は、火山が噴火した時に舞い上がって回転した跡だった。スケールの大きな地球の営みが生み出した「証拠」に、人は魅力を感じるようだ▼この物語が著された大正期に京都帝国大教授だった比企忠(ひきただす)は世界中から集めた鉱物を標本に残した。そのコレクションが京都大総合博物館(京都市左京区)で展示中だ。「宮沢賢治と鉱物」がテーマの講演会も9月15日にある▼「石ふしぎ博物館」と呼ばれる益富地学会館(上京区)に展示されている亀岡市産の天然記念物「桜石」も神秘的な岩石だ。何十万年にもわたる熱や冷却、風化を経て花びらのように美しい姿に変わった▼同館は、山や河原で集めた石を持ち寄って名前を調べる夏休みの子どもたちでにぎわう。地球の不思議に目を向ける機にしてほしい。京滋には大文字山(左京区)、田上山(大津市)など岩石や鉱物の採集に適した地も数多い。