歯科医師で映画演劇プロデューサーの古田博一さん=京都市在住=から1冊の絵本をいただいた。「オマール王子の旅」とある▼戦時中にマレーシアから南方特別留学生として日本に招致され、広島で被爆後、京都の病院で19歳で亡くなった王族のサイド・オマールさんの生涯を描く。4年前に記録映画で取り上げたが、子どもたちにこそ王子の存在を知ってほしいと絵本にしたそうだ▼趣旨に共感し、大学で美術を学んだ音楽ユニットTui・Titiのボーカルで、三線(さんしん)奏者の藤原飛鳥さんが絵を担当した。戦争と核がもたらした理不尽な死を静かに問う作品である▼王子は左京区の圓光寺にあるイスラム教式の墓石に眠る。毎年、命日に法要を営んできた会は11年前に解散したが、きのう同寺住職や元小学校教諭らが「語り継ぐ会」を新たに結成した。古田さんも名を連ねている▼広島、長崎で被爆した外国人の正確な数は不明だが、オマールさんのような留学生以外に、日本統治下にあった朝鮮半島の出身者や中国人、米兵捕虜らが数多く死傷したとされる▼そんな歴史に目を向け、一人一人の人生に想像を巡らせるきっかけになればとの思いもこめられている。原爆学習の教材に加えてほしい本だ。問い合わせは、あいり出版075(344)4505。