南アフリカ共和国といえばダイヤモンドや金の採掘で有名だが、「海の黒いダイヤ」とも呼ばれるあの高級食材も採れるとは知らなかった▼自国では食べないにもかかわらず、アワビの密漁がやまないという。マフィアを通じて輸出され、一部は日本にも流れている疑いがあると聞く。当局の厳しい取り締まりをかいくぐり、漁民たちは日々命懸けで海へ潜る▼現地の人によれば、不公平な漁業権の割り当てなどのせいで食い詰めた漁民が密漁に手を染めるという。アパルトヘイト(人種隔離)廃止後、白人に独占されてきた権益の配分が進むとはいえ、黒人の失業率はなお高く、格差は縮まっていない。周辺国の経済はさらに不安定だ▼13億人のアフリカ大陸では今後、人口急増が予測されている。30年で倍増というペースに見合う食料生産、雇用創出が欠かせない。28日から横浜市で始まるアフリカ開発会議(TICAD)の焦点の一つだ▼農地や鉱山に偏った開発政策を海や川へ広げようとの機運もある。島国で琵琶湖などの湖沼も抱える日本は、養殖はもちろん、民主的な漁業管理や観光開発の面でも貢献できそうだ▼ダイヤや黒い黄金(石油)の輝きは、大陸の内外の欲望を引きつけ、多くの紛争と不公正を生んできた。同じ歴史を海では繰り返すまい。