他国の領土をカネで買う-。最初はジョークかと思ったが、本気だったようだ。デンマーク自治領グリーンランドの買収に意欲を示したトランプ米大統領のことである▼「ばかげた話だ」とデンマーク首相は一蹴し、自治政府も「売り物ではない」と反発した。するとトランプ氏は9月の同国訪問を中止すると言い、首相を「非礼だ」と批判した▼どちらが非礼かは明白だろう。ただ、買収で国土を広げてきたのも米国の歴史である。グリーンランド買収は1946年にも当時のトルーマン大統領が持ちかけたことがある▼1803年には、フランスが主権を主張していた米大陸中央部・ミシシッピ川以西の広大な地を購入し、領土が独立当時の2倍に拡大した。67年にはアラスカをロシア帝国から買い取った▼西部開拓が進んだ時代、各地の先住民の代表が相次いで大統領を訪ね、生活を脅かす開拓行為への苦情を述べつつ平和共存を求めた。だが、土地取引は彼らを全く無視して行われた(猿谷要「検証アメリカ500年の物語」)▼トランプ氏はグリーンランド買収を「大きな不動産取引だ」と述べたが、そこには5万6千人が暮らしている。領土を住民ごと購入できると臆面もなく発想する米大統領が21世紀にも存在する-。ジョークのような現実である。