ドライブスルー方式による検体採取のデモンストレーションを行う京都市職員ら。認知症の人にとっては検査を受けることにも難しさが伴う(4月27日、京都市中京区・市役所)

ドライブスルー方式による検体採取のデモンストレーションを行う京都市職員ら。認知症の人にとっては検査を受けることにも難しさが伴う(4月27日、京都市中京区・市役所)

 4月下旬、京都市内で1人暮らしをする認知症の80代女性は医者の往診で発熱の症状が認められた。ヘルパーらを派遣している介護事業所は「発熱のある利用者のところには行かせられない」と派遣を拒んだ。
 女性は物忘れがあり、1人で食事や服薬ができない。家族はなく、デイサービスの利用とともに、ヘルパーらが1日2回訪れて自宅での生活を支えていた。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が拡大、京都府も特定警戒都道府県となった。デイサービスは施設内感染防止で休業しており、ヘルパー訪問も途絶えれば命に関わる状況になる。
 女性は検査で陰性と分かり、訪問は継続された。
 認知症の人が1人で生活したり、「老老介護」などで高齢夫婦が2人で暮らしたりする家庭が増えている。新型コロナに感染したり、疑いが出たりすれば、生活が崩壊しかねない。80代女性のサポートに関わった看護師は「今回は陽性でなかったから良かったが、生活が立ちいかなくなる認知症の人が増えるのでは」と懸念する。

 感染の恐れがある認知症の人にどう対応するか。さまざまな状況があり、医療の現場も難しい判断と対応を迫られている。
 堀川病院(京都市上京区)で入院患者や看護師らに新型コロナ感染が相次いだ4月、別の疾患で入院していた認知症の80代女性が退院した。集団感染が発生した病棟ではなかったが、帰宅後に感染が確認される可能性も否定できない。1人暮らしの生活を支えてきた看護師やヘルパーからは「はっきりするまで入院を続けるべき」との声もあった。退院後は看護師やヘルパーが毎日通い、発熱がないのを確認した。
 府医師会地域ケア委員の渡辺康介医師(71)は、この女性について「院内で本人が感染したり、歩き回ったりして意図せず広げる恐れがある。家に帰る方がいい」とする一方で、「症状次第では自宅でも頻繁に外を出歩く場合も考えられる。症状や家族関係、地域の受け入れ体制などから個別に判断するしかない」と現場の悩みも明かす。
 一緒に暮らす家族が感染しても、家族は隔離され、本人は家に残される。複数人の訪問ヘルパーを確保しないといけない。
 「認知症の人と家族の会」(同区)は、介護者が観察期間や治療・療養を終え帰宅するまでの限定的なケアプランの事前作成を呼び掛ける。しかし、本人も濃厚接触者に当たる可能性が高く、「ヘルパーの訪問を受けられるのか。来てくれても感染リスクを承知でおむつを替えてもらえるのか」などと心配する声が相次いで同会に寄せられており、不安が広がっている。

 介護の現場も厳しさを増している。マスクや消毒薬などの資材不足は深刻で、80代女性が訪問を拒まれたのもそれが理由だった。ヘルパーは身体接触が避けられない。手作り布マスクを何度も洗って使わざるを得ない事業所も多い。もともと人手不足は深刻だったが、「感染リスクが高い」として、さらに敬遠されそうだという。
 マスク着用や手洗いを求めることが難しい利用者もおり、左京区の居宅介護支援事業所のケアマネジャーは「ヘルパーの精神的な重圧は相当なもの。(新型コロナ治療の診療報酬が倍増されるなど)医師や看護師だけが注目されるが、認知症の人の生活を支える在宅介護の状況にも目を向けてほしい」。せめてもの支えとして、自腹で除菌スプレーを購入し、関わりのあるヘルパーに配っている。

 新型コロナは認知症の人の介護や医療、社会参加に大きな打撃を与え、支えの乏しさが浮き彫りとなっている。課題にどう向き合うかを考える。=3回掲載します