不祥事の処分にまで手心を加えていたのだろうか。

 賭けマージャンをしていたとして辞職した黒川弘務前東京高検検事長の処分が訓告となったのは、首相官邸が懲戒にしないと結論付けたためとの疑いが浮上した。

 多くの国民から「処分が軽すぎる」と批判の声が上がり、相当額の退職金が支払われることにも厳しい目が向けられている。

 人事院指針では賭博をした職員は「減給」または「戒告」の懲戒処分とされる。複数の法務・検察関係者が、法務省は懲戒が相当と判断していたと証言している。

 なぜ訓告となったのか。安倍晋三首相はきのうの参院厚生労働委員会で「法務省が検事総長に訓告が相当と伝え、検事総長も訓告が相当だと判断して処分した」と述べ、関与を否定した。

 確かに処分の主体は検事総長だが、実質的に事前に官邸で決めていたのではないか。検事総長に責任転嫁していると取られても仕方ない。

 森雅子法相の当初の説明とも食い違った。法相は最終的に内閣が決定した処分を検事総長に相当だと伝え、検事総長が訓戒処分としたと会見で述べた。

 その後、法務省と検事総長が判断したと首相に寄せて説明を修正したが、納得できない。

 思い返されるのは、問題の発端となった黒川氏の定年延長に関連し、人事院給与局長が国会答弁を撤回したことだ。

 国家公務員法の規定が検察官には適用外とした、1981年の政府答弁の解釈について「現在まで引き継いでいる」と説明したが、後に修正した。

 野党は、定年延長を巡る法解釈変更を明言した首相の答弁と整合を図ったと批判した。

 今回の処分も政権に近いとされる黒川氏だから指針をゆがめ、特別な扱いにしたのではないか。

 首相の国会発言を巡っては、これまでもつじつまを合わせるために閣僚や官僚が事実をねじ曲げた疑惑があった。同じようなことが繰り返されている。

 森法相は「法務・検察行政刷新会議」を法務省内に設置すると表明した。だが首相は、野党が求める再調査について「法務省が適切に調査を行った」と要求を拒否している。

 「法務・検察が適正に役割を果たすには、信頼が不可欠だ」(法相)と言うなら、首相は処分の経緯や根拠について説明し、疑念に答えるべきだ。国民の目をそらしてはならない。