路面電車の整備が始まっている、と聞き、宇都宮市を訪ねた。以前走っていたわけではない。いまどき全て一からの鉄路建設というから、わくわくする話ではないか▼3年後の開業に向け工事が進むのは、JR東北線の宇都宮駅から東へ15キロの路線。隣町にある国内最大級の工業団地と結び、LRTと呼ばれる最新車両を走らせる。旧市街にも路線を敷く計画だ▼地元の人が「典型的な車社会」と嘆く同市で鉄路の構想が持ち上がったのは25年以上前。渋滞の解消が目的だった。しかし「総論賛成、各論反対」で一時は宙に浮いた。よく聞く話である▼転機は市民団体の議論だった。「空き店舗が多い旧市街をなんとかしたい」「路面電車をまちづくりに使えないか」。有志が富山市や広島市など、路面電車が走る都市を訪ね、行政に働きかけた▼市はLRTを市の幹にして、枝になる地域をバスなどで結ぶ構想をまとめた。市民でつくる「雷都(らいと)レールとちぎ」代表の奥備和彦さん(78)は「私たちの声が反映されている。今後、大切に育てるのも私たちの役割」と話す▼京都市でも一時期、市や経済界を中心にLRT導入話が盛り上がった。今出川通で社会実験もあった。あの熱気はどこに行ったのだろう。市のホームページにはLRTの文字がまだ残っている。