そう遠くない昔、「牛丼」をついぞ見掛けなかった。あったのは「肉丼」である。「肉」といえば、関西では牛なので、豚を指す地域からやって来た牛丼は、どこか異国の食べ物のようだった▼それが今、どの街を歩いても牛丼店がある。大手3チェーンの店舗数は、国内合計で4千を超えた。国民の消費行動に、大きな影響を及ぼしている▼親子丼と比べて、肉丼は高価な場合が多かったが、ファストフードとなった牛丼は安い。輸入牛肉の活用や多店舗化で、コストダウンを実現した。低価格競争が繰り広げられたため、会社員らの昼食にかける費用を抑制したときもある▼10月から消費税率が引き上げられ、軽減税率も導入される。店内の食事は税率10%だが、持ち帰りは8%のままとなる。3チェーンは、どう対応するのか。一つは本体価格を据え置き、ケースごとに税率を適用する▼残る二つは、店内と持ち帰りの税込み価格を同額にする方針という。消費者には分かりやすいようだが、これでは同じ商品の本体価格が2種類できてしまう。店内から見れば、持ち帰り用は別の食べ物だ▼ふに落ちないので、食べた気がしなくならないか。持ち帰りの包装に経費がかかる、というような説明が要る。細かい点をいちいちチェックしたくなる増税前である。