コロナ禍における科学と政治のあるべき関係について、オンラインで語る八代教授

コロナ禍における科学と政治のあるべき関係について、オンラインで語る八代教授

 新型コロナウイルスへの対策を講じる中で、科学と政治の関係性が強まっている。政府の専門家会議のメンバーを含め科学者が積極的に政策を提言する一方、政治家は医学的データを駆使して国民向けに説明を試みる。科学の役割が増す中、政策決定の上で課題も見え始めている。科学技術社会論が専門で、京都大iPS細胞研究所に所属した経験もある神奈川県立保健福祉大の八代嘉美教授に見解を聞いた。

 -感染症対策では、科学的知見に基づいた政策決定が求められる。
 「確かにそうだが今回、政府と専門家の関係性がはっきりしていない点に問題がある。政府の専門家会議のメンバーが積極的に会見を開いていることもあり、政策決定に同会議が大きな責任を持つ印象を与えている。報道でも、専門家会議のメンバーに政策に関する判断を仰いでいるように映る。しかし専門家会議の職責はあくまで科学的助言であり、政策決定の責任は当然ながら政府にある。政府は説明責任やガバナンスから逃げているようにも見えてしまう」
 -専門家会議以外の科学者からも、大学の研究機関でのPCR検査実施など積極的な提言がある。
 「科学者が専門の枠を超えて個人として情報を発信する姿勢は理解できる。科学コミュニケーションとして重要だろう。だが番組の企画などで政策決定を担う政治家へ直接、提言しているケースも散見され、行き過ぎの感は否めない。特に著名な研究者は社会への影響力も大きい。本人の責任感からという点は疑わないが、科学者として政治に踏み込みすぎているように感じる」
 -政策決定において専門家の存在感が増す一方、アビガンやレムデシビルなどの治験については、首相や閣僚など政治家が承認時期の目安を述べた。
 「安全性や有効性を科学的に確認する治験の過程は中立性を保たなければならない。政治家が承認時期について発言することは『前のめり』の面は否めない。承認過程が不透明な状況につながりかねず危惧している。新型コロナウイルスを巡る治験の手続きが簡略化されている点も問題だ。諸外国でも緊急使用として治験を省略し一時的に利用を認める制度はあるが、これは患者数が限定され健康被害が大きくならないことが前提にある。治療薬の広い利用につながる『承認』に当たって治験がこのような形でよいのか疑問は残る」
 -緊急事態の中で、政治と科学の関係性がちぐはぐに見える。
 「政治家が主導権を発揮するべきところで専門家に任せる一方で、科学的判断に任せるべき部分で口を挟んでいる印象を受ける。科学の在り方を考える上でさまざまな課題が浮上したと言える。ただ保険制度など条件の異なる諸外国と容易に比較はできないものの、日本の新型コロナ対策は死者数などから見て現状ではおおむね間違ってこなかったのは事実。政治と科学の関係を考える上で、功罪両面から公正に検証することが重要だ」