一瞬が意味のある時もあるが、10年が何の意味を持たないこともある-。1978年の自民党総裁選に勝った大平正芳元首相の言葉だ。予想を覆す大逆転で現職福田赳夫氏を退けた▼両氏の争いはその後も続いた。79年に衆院選敗北の責任を巡り「四十日抗争」、80年には野党が提出した大平内閣不信任案の採決に福田派などが欠席し、衆院の「ハプニング解散」を招いた▼この選挙のさなかに大平氏が急死、弔い合戦の様相となった自民は大勝利を収めた。苦労を重ねても党内をまとめられない時がある一方、アクシデントによる選挙で勝利が転がり込む場合もある-。まさに大平氏の言葉通りとなった(奥島貞雄「自民党幹事長室の30年」)▼それから約40年。今の自民は派閥争いどころか、安倍晋三首相の意向に逆らえない空気が支配的だ。きょう予定される内閣改造と党役員人事も、安倍氏に近い議員らの起用が伝えられる▼批判はあったが、衆院解散を2度も断行する瞬発力で勝利を重ねた現実が「安倍1強」をより強固にした。だが、政治指導者の役割は身内の統率だけでは済まない▼第1次政権時も含めて足かけ10年となる安倍氏の首相在職で、政治のあり方や国民生活はずいぶん変わった。この10年にどんな意味があったか、冷静な点検が必要だ。