ストレッチャーに乗せられ伏見署を出る青葉容疑者(27日午後2時15分、京都市伏見区)

ストレッチャーに乗せられ伏見署を出る青葉容疑者(27日午後2時15分、京都市伏見区)

 京都アニメーション放火殺人事件で、京都府警は体が自由に動かせない状態の青葉真司容疑者(42)の逮捕に事件発生から10カ月で踏み切った。事件当時の記憶が薄れる前に取り調べをする必要があるが、重度のやけどで通常の勾留はできない-。この矛盾を解決するため、京都府警捜査本部は医療スタッフが常駐する大阪拘置所で勾留し、治療を続けながら取り調べを進めるという異例の捜査を選択した。

 青葉容疑者は会話に支障がない程度まで回復したが、体は自由に動かせず、ベッドから自力で起き上がるのも難しい。移植した皮膚の炎症防止など治療も欠かせず、警察の留置施設に収容するのは不可能だった。

 一方で捜査本部は、青葉容疑者の記憶の減退が進み、事件当時の精神状態や犯行の背景に関わる供述の正確性が損なわれることを懸念。動機を解明できなくなる恐れがあるとして、可能な限り早い逮捕を模索した。

 捜査本部は、入院時と同様の治療を施すことができれば逮捕は可能と判断。医療設備が整い、専属の医師や看護師が複数いる大阪拘置所を収容先の候補に決めた。

 だが、逮捕までには曲折があった。捜査関係者によると、捜査本部は青葉容疑者の容体が一定回復したとして今年1月以降、少なくとも4回にわたって逮捕を本格検討した。だが、青葉容疑者はやけどの影響で急に高熱を出したり、大阪拘置所の刑務官が新型コロナウイルスに感染したりして、実現しなかった。

 5月ごろからは発熱の頻度が減って容体が安定。新型コロナ感染防止のための緊急事態宣言が21日に近畿で解除されたこともあって、逮捕の環境が整った。

 これまで青葉容疑者が語ったとされる「小説を盗まれた」とは何を指すのか。引き金になる出来事はあったのか。体調管理に細心の注意を払いながら、捜査本部は本格的な動機解明を目指す。

 専門家からは疑問の声も上がる。刑事訴訟法では逮捕ができる要件として、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由とともに、逃亡や罪証隠滅の恐れがある場合と定めているからだ。