いつもの朝なのに物足りない。そんなリスナーもいるだろう。FMCOCOLOのDJヒロ寺平さんが9月末でレギュラー番組を引退した▼1999年からFM802で月―木曜の朝を担当。以来、20年にわたって関西の「朝の声」を務めた。朝食を作りながら、開店準備の傍ら、通勤の車中で―聞くともなしに耳にしていた市民も多いはず▼ラジオは働く人の伴走者だ。黙々と仕事に取り組む人に、同じ時を生きる者の声を届けて寄り添う。流れてきた音楽や言葉に、励まされたり涙したりすることもある▼ドラマのヒロインら、慣れ親しんだ顔が見られなくなって寂しい。そんな喪失感を近年は「○○ロス」などと表現する。習慣化した日常が途切れると、体のリズムも崩しかねない。おりしも秋の番組改編時期、ロスに悩む人もいるだろう▼生放送でふと漏らす一言には語り手の人間性や見識が表れる。6月にFM京都DJの佐藤弘樹さんが亡くなり、ヒロさんの声も聞けなくなるとは。「やっぱり続けるわ」の言葉を待っていたが「じゃあね」と番組を閉じた▼背中を押されて家を出る、そんな声にまた出会えるか。新しい友達をつくるのは、いくつになっても骨が折れる。聞いたこともなかった番組に、耳を傾けてみる。意外に波長が合うかもしれない。