自衛隊初の宇宙専門部隊「宇宙作戦隊」が発足した。

 宇宙ごみ(デブリ)や隕石(いんせき)、不審な衛星を監視し、日本の人工衛星を守るのが任務だ。米国が昨年12月に立ち上げた宇宙軍とも連携し、電磁波を使って他国の衛星を介した指揮や通信を妨げる技術の実用化も見据えている。「宇宙の平和利用」を大原則にしてきた日本にとって大きな転換点と言えよう。

 防衛省によると、宇宙作戦隊は航空自衛隊府中基地(東京都)を拠点に約20人で始動。2023年度までに100人規模に増強して本格的な活動を始め、山口県に建設するレーダーで通信衛星などが周回する高度約3万6千キロの静止軌道を監視する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米軍と情報を共有してデブリを把握するシステムの運用も目指す。

 日本は、宇宙空間の平和利用をうたった1969年の国会決議を踏まえ、科学技術や研究開発を軸に宇宙政策を進めてきた。しかし2008年制定の宇宙基本法により軍事利用に道を開き、安倍晋三政権下の15年に宇宙安全保障の確保を重点課題とした新たな宇宙基本計画を策定、18年に閣議決定した「防衛計画の大綱」で宇宙専門部隊新設を打ち出していた。

 背景には、中国やロシアが加速させる、宇宙の軍事利用に対する強い懸念がある。中ロは他国の人工衛星を攻撃する「キラー衛星」を開発しているとされ、情報収集衛星が破壊されれば軍事動向をつかめず、通信衛星が乗っ取られれば同盟国の情報が筒抜けになる。

 米軍は1万6千人規模の宇宙軍を創設した。陸海空に次ぐ「第4の戦場」とされる宇宙空間でも日米連携を図ることになる。懸念への備えは必要としても、米軍との過度な一体化が気掛かりだ。

 河野太郎防衛相は、米国の衛星が他国から攻撃された場合、安全保障関連法に基づく存立危機事態に当たりうるとの認識を表明。集団的自衛権行使の可能性に含みを持たせたが、憲法や専守防衛の方針との整合性を巡って専門家の意見は分かれる。どんな事態であれば他国の衛星運用の妨害も許されるのか、日本の衛星が攻撃されれば直ちに自衛権を行使できるのか。国際ルールは未整備で、曖昧な点が多い。まず議論が欠かせない。

 安倍首相は「航空宇宙自衛隊への進化も夢物語ではない」と前のめりだが、宇宙での軍拡競争に各国の警戒感が強まるのは必至だ。必要なのは宇宙の軍事化に互いに歯止めをかける努力ではないか。