多くの人命がなぜ奪われたのか、何としても知りたい。

 昨年7月、アニメ製作会社「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、社員36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、京都府警は殺人や現住建造物等放火などの疑いで、さいたま市の無職青葉真司容疑者(42)を逮捕した。

 重いやけどの治療をしてきた青葉容疑者が、勾留しての取り調べに耐えられる程度に回復したとの判断だという。発生から10カ月を経て、動機の解明に向けた捜査が本格的に動きだすことになる。

 京都などを舞台に世界的に人気の作品を送り出してきたスタジオが襲われ、平成以降で最多の犠牲者を出した放火殺人事件である。

 大切な人を突然奪われた遺族をはじめ、国内外のファンや地域、社会全体に強い衝撃を与えた。犠牲を繰り返さないよう、真実を明らかにしてほしい。

 府警によると、青葉容疑者は「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思って実行した」という趣旨の供述をし、容疑を大筋で認めているという。身近な燃料が凶行に用いられた現実に改めて身震いを覚える。

 これまでの捜査で、青葉容疑者は事件3日前に京都に入り、現場や宇治市の同社本社近くを下見していたとされる。鉄道や徒歩で移動を繰り返し、ガソリンや包丁6本などを準備しており、周到な計画性がうかがえるという。

 事件の核心は、そうまでして京アニを標的とし、大勢のスタッフたちへの殺意を抱いて実行したのはなぜかということだ。

 青葉容疑者は、事件当日の身柄確保時に加え、昨年11月に府警が任意で事情聴取した際も「(京アニに)小説を盗まれたから火を付けた」と動機を説明したという。

 本人によるとみられる京アニへの小説の応募記録や、インターネット掲示板に「裏切られた」と記した書き込みも見つかっている。

 一方的に恨みを募らせた可能性があるとみられているが、69人の殺傷という結果の重大さとあまりにかけ離れているとの指摘もある。他にも何らかの理由があるのか、青葉容疑者は真摯(しんし)に語ってほしい。

 現在もほぼ寝たきりで、自力で歩行や食事ができないという容疑者の病状には留意が必要だ。事件前の居住先でのトラブルなど言動に不可解な面もある。取り調べに当たっては、体調面への配慮とともに、当時の精神状態などを慎重に見極めることが求められる。