今年の京都新聞書き初め展の入賞者作品を紹介する紙面。上が滋賀、下が京都

今年の京都新聞書き初め展の入賞者作品を紹介する紙面。上が滋賀、下が京都

個性的な文字が並ぶ京都新聞書き初め展の滋賀の入賞者作品を紹介する紙面

個性的な文字が並ぶ京都新聞書き初め展の滋賀の入賞者作品を紹介する紙面

今年の京都新聞書き初め展で京都の入賞者作品を紹介する紙面

今年の京都新聞書き初め展で京都の入賞者作品を紹介する紙面

 ハネがなく、丸みの少ない文字の硬筆作品や、紙からはみ出しそうな構図や勢いのままかすれた文字の毛筆作品。「滋賀の小中学校では書写の授業でどのような文字が評価されているのでしょう」。こんな疑問が京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。確かに、整った印象の他府県の書道作品に比べて、湖国の子どもたちの作品は自由で個性的だ。なぜだろう。滋賀独自の書写教育を育んだ理念と歴史を探った。

 「滋賀では硬筆と毛筆それぞれの特性に合わせた指導方法を実践しているんです」。滋賀県立膳所(ぜぜ)高書道班顧問の藤居孝弘教諭(55)が、小学生向けの硬筆指導で使う県書道協会独自の「ひらがな標準字体表」を見せてくれた。

毛筆は自己表現向き

 例えば「い」は左側の線にハネがなく、膨らみも抑えた形だ。藤居教諭は「低学年の子がハネをすると、過剰に曲げてしまう例がよくある。直線的ですっきりした形を教えているのは、誰でも上手に書けるよう文字の骨格をしっかり学んでもらうため」と説明する。
 ハネや膨らみのある形は成長とともに自然と書けるようになるといい、「『ハネてはだめ』と指導していると誤解されることもあるが、発達段階に応じて『ハネなくてもいいよ』と教えているんです」と語る。

 一方、毛筆は鉛筆と比べて先が柔らかく、墨の濃さや力加減で、線の濃さから太さまで自由自在に調整できる。「毛筆は自己表現に向いている」と藤居教諭。手本はなく、かすれても、にじんでも、紙からはみ出してもいい。「児童が互いの作品の良いところを探し合う。自分のことを見つめ、他者を理解することは人間形成の一助になると考えています」と語る。
 一方、京都書作家協会の竹内勢雲事務局長(59)=京都市上京区=は「京都では書写の文字を評価するポイントは正しさや美しさ、力強さ、バランスの良さ。文部科学省の学習指導要領にのっとっています」と話す。

理念出発は70年前

 「書道を教えるのではなく、書道で教える」。滋賀は書写の学習を「書教育」と位置づけ、独自の指導方法を発展させてきた。その歴史は戦後間もない頃にさかのぼる。
 書道教育は戦意高揚に利用されたとして、戦後、いったんは廃止された。当時の滋賀の教員たちは何とか書道教育を振興しようと、1949(昭和24)年、現在の県書道協会の前身となる県習字教育協会を立ち上げた。
 小中高大学が連携し、子どもらしく、伸び伸びと文字を学べる方法を議論し、10年余りかけて現在に続く指導方法にたどり着いた。協会の神田浩理事長は「教員たちが実践を踏まえて研究を重ねた徹底した現場主義と熱意が、机上の空論に終わらず、発展した理由ではないか」と推測し、「子どもたちの感性をさらに豊かにするような書教育を目指したい」と話す。